本作について 本映画制作に携わりご協力頂いた皆様に心より感謝申し上げます。 ▽△▽△▽△▽△▽△ 本映画は、「縁」で出来ている。 縁が無ければ到底制作するに至らなかった。縁は、人と人を繋ぎ、偶然が偶然を呼び、やがて奇跡を起こす。行動するということは、それを信じられるかどうかだ。 「未来は分からない」という当然でありきたりな言葉が、痛烈に自分の胸をえぐり、考え、時に思考停止に追い込まれ、進むしかないという結論に至る。映画を創るというのはその繰り返しではなかろうか。 そして、本作の主人公である蒼真も、その思考の中をグルグルと彷徨っている言わば同士のような存在だ。私は、蒼真と共に道なき道を突き進んだ。時に反発し、時に同化し、時に絶叫した。自分自身の投影でもあり、魂を分かち合った戦友でもあり、全くの別人でもある。想像上の人物をそこまで敬愛できるのは私自身が監督という立場で本作に携わった賜物だ。監督という不思議で未知な生命体として制作に携われた事は一生の宝である。 蒼真は初音と共に行動を起こした。その原動力もまた「縁」だ。それがなければ奈良・吉野に行く発想すら浮かばなかったであろう。そしてそれが蒼真の心を激しく揺さぶり、いつしかその目には、迷いや不安のない、決意が宿る。吉野の大地に本能を掻き立てられ、本来あるべき力強さに満ち溢れていく。 「前進あるのみ」という装飾のない言葉は、本当にそうでなきゃいけない瞬間に絶大な効力を発揮する。まさにそのような瞬間が本作の制作中に幾度となく訪れた。私は何度その言葉を心の中で繰り返した事だろう。純粋にそう思える幸せで贅沢で我武者羅な時間を過ごせる創作の力は半端なく刺激的だ。 「その先が見てみたい」という清廉潔白なる道の選択が、縁による奇跡を生むと信じたい。 本作を語ろうとすると、どうしても「道」とは何か？、「人生」とは何か？、「生きる」とは何か？と考えさせられてしまう。 私が作りたかったのはそういう映画だ。 監督　中村英児